さよなら歌舞伎町|汚れてたって、生きて行く。
もうじき公開も終わるしで、送別会で忙しくなる前に観に行ってきました。
新宿歌舞伎町を舞台とした5組の男女の群像劇です。主人公は倦怠期のカップル。ミュージシャンを目指す彼女とはこのところセックスレス、お台場のグランパシフィックに出勤するはずが、実際に出勤するのはラブホテル「アトラス」で、わけありスタッフ達に振り回される名ばかり店長。その他、数日後に女の子が帰国するため、別れを目前にした韓国人カップル、中年男性を家にかくまう中年女性、家出少女とチャラ目のチンピラ、警察官の不倫カップルの一日の物語が主人公の働くホテルを軸に展開します。
「アトラス」は実在のラブホテルで、ホテル内も柏に実在するラブホテルだそうな。一つのラブホテルでいろんなことが起こりすぎとか、いらないエピソードが多いとかいろんな感想ありますが、基本的には男性も女性も楽しめる、よくできた物語だと思います。
登場する人はみんな、洗っても落ちない汚れが染みついていて、それを象徴するのが、韓国人カップルのお風呂のシーン。
気が付いたら澱が溜まって洗っても洗っても洗い流せない時のあの絶望感、ぞっとする暗さって、ある程度生きてきた女性ならみんな抱えている。
汚れのない自分に戻れなくても、それでも生きていかないといけない。
だからこそ、エンドロールの一番最後のシーンに、ちょっと救われるんじゃないでしょうか。
賛否両論のある前田敦子さん、私はあのぼーっと空っぽな感じと声はなかなか良いと思いました。
ロケ地見学会@味園ユニバース
過去記事:味園ユニバース、ファンタジーとしての大阪。 - 漂泊の日々
先週の金曜日に行ってきました。ライブで来たことがあったので、2回目です。
楽屋が見られるとの触れ込みだったので楽しみにしていたのに、当日行ったら楽屋は見られません、と貼り紙してありました。ガッカリ。
元キャバレーだけあって、豪華絢爛な雰囲気。今からこの階段を下ると別世界が待っているよ…と否が応でも予感させます。
キラキラのシャンデリアをくぐってフロアへ。舞台から見て奥にオシャンティなドリンクバー。
正面に、舞台が煌々と虹色に輝いております。みなさん写真撮りまくり。
普段のライブ会場としてみるよりも明るい状態だったのでiPhoneでもなんとか映りましたが、まともなカメラを持ってこなかったことを死ぬほど後悔しました。
あー、見逃したけど他の見学会もいけばよかった。タクヤの事務所になってた九条の廃墟ビルとか。
なにかと残念。
アメリカン・スナイパー。戦争の勝者って何処にいるの?
夜、ふとつけたTVで海外のドキュメンタリーが流れていて、思わず目が離せなくなることがある。暗い部屋で光るTVの画面が、知らない世界に向かってぽっかり窓みたいに空いていて、その中でいろんな人が、非現実に見える現実の世界で、問題を抱えながら必死に生き抜いている。
アメリカン・スナイパーは、そんなドキュメンタリーを観ているような気持ちにさせる映画だった。
***以下、ネタバレご注意ください***
テキサスで、弱きものを邪悪なるものから守る強い存在であれと父に育てられた主人公は、アメリカ大使館爆破事件をきっかけに海兵隊の志願兵となる。
父に仕込まれた射撃の腕を見込まれ、特殊部隊シールズに配属され狙撃主としてイラク戦争に参加した主人公は、伝説のスナイパーとして味方に称えられる一方、敵には悪魔と呼ばれ、多額の賞金をかけられることになる。ここまでが導入部。
戦争映画が苦手な人には全く向いていない。
ダイーシュの設立にも関わったアル・ザルカウィをターゲットとした作戦、オレンジの囚人服を着せられ斬首される人々、死体。銃火器と隣り合わせで日々を過ごすイラクの人々。イスラム国に、日本人の人質2名が殺害されたこのタイミングでの公開は、人知を超えた世界の意思ってほんとにあるんじゃないか、と思ってしまう。
アメリカの正義に敵対するアルカイダの邪悪な所業が、裏返せばイラクの人々にとって家族や平和な日常を守るための正義となることが、さりげなく描かれている。
目には目を、と負傷した仲間の報復に向い、皮肉にもアメリカの正義に疑問を抱いていた仲間が最初に死亡する。
殺される仲間を一人でも生み出さない、との強い意志で戦地への派遣を繰り返す中で、いつの間にか戦地が日常、家族と過ごすのがかりそめの日々へとすり替わっていく。主人公が戦争という病に侵されていく過程を描いたドラマ。
映画を見て残ったことは、どこにも勝者がいないこと。少なくとも映画に登場する、普通の人々の中には誰ひとり。
アメリカでは、主人公クリス・カイルを巡って刑事裁判が近く予定されていることもあり、世論を二分する話題作となっているらしい。
観に行った梅田の映画館はガラガラ。
主人公は映画の中でこんな趣旨のことをいっていた。「日々戦士が戦いで命を落としているのに、ここでは誰一人としてその話をしていない。」
窓の向こうでは現実なのに。
味園ユニバース、ファンタジーとしての大阪。
映画みよっか?と、映画館にたどり着いたときにちょうど始まる時間だったので観ることになった、味園ユニバース。
生まれも育ちも大阪だけど、大阪には愛憎半ばする気持ちがある。
大阪の代表とされる吉本新喜劇は、昔はベテラン芸人さんによる一発芸で構成されていて、どこがおもしろいのかわからないという理由でTVで観ることがなかったし、たこ焼き焼き機も家になかった。大阪にしては大阪っぽくない家庭で育ったんだと思う。
それに、いわゆる大阪っぽいと認識されるであろう漫才口調でしゃべる人間は、少なくとも自分が小学校の時は周りにいなかった。オカン、オトンなんて、ダウンタウンの番組が人気になるまで、周りの男子が使っているのを聞いたこともなかった。
作られた大阪に違和感を覚える一方で、大丸心斎橋店とか昔のそごうとか、古き良き時代の建物や、道頓堀の猥雑な感じは好きで、味園ユニバース界隈の雰囲気が好きで、フラフラ歩いていたりした。
そんなこんなで、わかりやすい大阪っぽさになんとはなしに反感を持って育ってきたので、この映画は、気にはなるけど、描かれてるのはナニワ金融道的な大阪なんだろうな、と思ってほんとは観る気はなかった。出所したばかりの記憶を失った男、家族を失った少女、歌と音楽への情熱。並べただけでもうすでにお腹いっぱいになるコテコテさだし。
実際観てみると、自分の好みではないけれど、思っていたのとも違う大阪が描かれていた。ゴミが道端に落ちていたりする工場街とか、繁栄から取り残されたわびしい感じの風景をつなぎあわせて、コテコテではあるけれど、少し力の抜けた、アジアの一都市という感じの大阪。
大阪を知っている人がつくったファンタジーの世界。
物語自体は、なんとも他愛のない話だけど、いわゆる予定調和からも少し外れていて、見終わって肩透かしを食ったようなゆるい感じ。
映画を見る時によく参考にしてるブログで、同じ日に観たブログ主が、物語を期待していく映画じゃないと書いていて、あー、観る前にこの感想をみたら違う見方ができたかもしれない、と思った。
くすんだ街並みで、レトロで暗めの色調の画面のなかで、ランバードのジャージ、ダボダボのTシャツ、短パン&ビーサン、とだらしない恰好の二階堂ふみが輝いてる。正直、この映画は好みがはっきり分かれる(正直自分の好みじゃない)だろうけど、この二階堂ふみは少なくとも観る価値がある。
ゆっくりと登場人物の心の移り変わりと、音楽への愛を観る映画です。
ちなみに、二階堂ふみの大阪弁はかなり完成度が高くて、関西人でもストレスなく映画に集中できるレベル。若いのにほんとすごい女優さんです。
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