味園ユニバース、ファンタジーとしての大阪。
映画みよっか?と、映画館にたどり着いたときにちょうど始まる時間だったので観ることになった、味園ユニバース。
生まれも育ちも大阪だけど、大阪には愛憎半ばする気持ちがある。
大阪の代表とされる吉本新喜劇は、昔はベテラン芸人さんによる一発芸で構成されていて、どこがおもしろいのかわからないという理由でTVで観ることがなかったし、たこ焼き焼き機も家になかった。大阪にしては大阪っぽくない家庭で育ったんだと思う。
それに、いわゆる大阪っぽいと認識されるであろう漫才口調でしゃべる人間は、少なくとも自分が小学校の時は周りにいなかった。オカン、オトンなんて、ダウンタウンの番組が人気になるまで、周りの男子が使っているのを聞いたこともなかった。
作られた大阪に違和感を覚える一方で、大丸心斎橋店とか昔のそごうとか、古き良き時代の建物や、道頓堀の猥雑な感じは好きで、味園ユニバース界隈の雰囲気が好きで、フラフラ歩いていたりした。
そんなこんなで、わかりやすい大阪っぽさになんとはなしに反感を持って育ってきたので、この映画は、気にはなるけど、描かれてるのはナニワ金融道的な大阪なんだろうな、と思ってほんとは観る気はなかった。出所したばかりの記憶を失った男、家族を失った少女、歌と音楽への情熱。並べただけでもうすでにお腹いっぱいになるコテコテさだし。
実際観てみると、自分の好みではないけれど、思っていたのとも違う大阪が描かれていた。ゴミが道端に落ちていたりする工場街とか、繁栄から取り残されたわびしい感じの風景をつなぎあわせて、コテコテではあるけれど、少し力の抜けた、アジアの一都市という感じの大阪。
大阪を知っている人がつくったファンタジーの世界。
物語自体は、なんとも他愛のない話だけど、いわゆる予定調和からも少し外れていて、見終わって肩透かしを食ったようなゆるい感じ。
映画を見る時によく参考にしてるブログで、同じ日に観たブログ主が、物語を期待していく映画じゃないと書いていて、あー、観る前にこの感想をみたら違う見方ができたかもしれない、と思った。
くすんだ街並みで、レトロで暗めの色調の画面のなかで、ランバードのジャージ、ダボダボのTシャツ、短パン&ビーサン、とだらしない恰好の二階堂ふみが輝いてる。正直、この映画は好みがはっきり分かれる(正直自分の好みじゃない)だろうけど、この二階堂ふみは少なくとも観る価値がある。
ゆっくりと登場人物の心の移り変わりと、音楽への愛を観る映画です。
ちなみに、二階堂ふみの大阪弁はかなり完成度が高くて、関西人でもストレスなく映画に集中できるレベル。若いのにほんとすごい女優さんです。